熊野市井戸町、大馬神社(山東美晴宮司)奥宮の例大祭が6日に執り行われ、清めの雨が降り注ぐなか、伝統の弓引き神事が若者2人によって奉納された。
同神社は、大同4年(809年)に勅命を受けて熊野地方を平定した坂上田村麻呂が、この地方の平和を祈願して熊野国総鎮守として建立したと言い伝えられている。弓引き神事は、約100年続く伝統行事で、正月の6日に地元の若者が、今年の平安と豊作などを祈願して合計24本の矢を放つ。
神事を前に禊場にて水垢離が行われ、弓引きの片岡大和(木本高3年)、濱田豊さん(同)、矢拾いの渡邊廉士(井戸小3年)、清水朔君(同)が周囲も凍える寒さの中、神社横の冷たい川に浸かり、神聖なる弓引きの前に身を清めた。
その後の神事には同神社総代会の三角田愼二会長、同会顧問の松田豊さん、立嶋昌洪同神社総代会副会長ら関係者が参列。山東宮司の祝詞奏上のあと、山東宮司により豊栄舞が奉納され、玉串奉てんなどの神事が執り行われた。今年度も昨年に続き新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、名物の鳥汁うどん振る舞いや餅まきなどは中止とした。
このあと、社務所下で勇壮な弓引き神事が行われ、古代衣装に身を固めた2人が五穀豊穣などの願いを込め、約15㍍離れた的に向かって20本の矢を放った。矢は合わせて7回的を射抜き、参拝者から歓声が沸き起こった。残る4本は魔除けの遠矢として大空に向かって放たれた。
片岡、濱田さんは「雨と寒さで練習のようにはいきませんでしたが、何とか当てることができてホッとしています。新型コロナウイルスが1日も早く終息して、少し前のようにみんながマスクを外して生活できる世の中になればいいなと思います」と大役を終えホッとした様子だった。