熊野市の若手農業者らでつくる「農家コミュニティサークル『農の風くまの』」(久保雅彦代表)が4日に発足した。地域の農業者が抱える問題や将来の展望などを話し合い、次世代へと繋げられるより良い農業の在り方を探っていく。
農業者と熊野市・南牟婁郡選出の谷川孝栄県議との意見交換会の中で、柑橘や水稲、野菜など分野を超えた専業農家が課題や目標などを共有し希望ある農業の実現のため、連携を深めようという意見があり、新サークルの設立へと至った。メンバーは現在、市内の農業者13人で、関心のある農業者がいれば仲間を増やしていくという。
4日は金山多目的集会場で会合があり、会の名称などを決めた。熊野市に新しい風を吹かせるという意味を込め「農の風くまの」とした。会費などは集めず、意見を出し合い農業の問題点を改善していくグループを目指している。
意見交換では、市町村が将来的に農業上の利用を確保すべき土地として指定した区域での農地転用を禁止する農業振興地域制度の緩和を求める声があった。耕作放棄地などが多い中、宅地転用により得た利益で農業施設整備の原資に補填したいという生産者も。ビニールハウスでの木質バイオマスの燃料使用のモデル的な導入や、生産量の少ない産品や規格外品を加工するためのコーディネートを求める意見もあった。
後継者問題のため法人化した農家からは「ミカンの仕事は繁忙期と暇な時期が極端なため、年間雇用で人数を揃えられない。短期的に人を入れられるシステムができれば経費削減が出来る」との声。新規就農の立場からは「ソフト面の支援がもっとあれば心強い」と意見があり、農業者の間で新規就農者の情報を共有できる体制の必要性も語られた。
障がい者の自立支援と農業を紐付けた農福連携の推進や、「園地整備をして後世に受け継がれる農業をしたい。荒れている隣の他人の畑の草を刈る労力がきつい」「柑橘振興においては熊野市、御浜町、紀宝町の自治体で格差が大きい。統一できれば農家のモチベーションも上がってくる」など、活発な意見交換が行われた。
谷川県議はこれらの意見を「10月15日の県議会一般質問で取り上げたい」と述べた。また、意見交換会には前三重県知事で自民党三重4区支部長の鈴木英敬さんも参加しており、これまでの経験から国や県の制度などを元に助言した。農業、漁業、宿泊業、飲食業などが一つの組合を作り、繁忙期にそれぞれの担い手として連携する国の「特定地域づくり事業協同組合」の制度も紹介し「国で制度の根幹をつくって県や市でしっかり運用してもらう。それに皆さんの様なグループが連携していく必要がある。連携して課題が解決できるようにしていきたい」と話した。
久保代表は「農業は儲かると、次世代に胸を張ってバトンを渡せるようにしたい」と話していた。