熊野市木本町の七里御浜海岸で17日、初精霊供養が営まれた。昨年に続き熊野大花火大会が中止となった中、23家庭の遺族らが最愛の家族の御霊を弔い、打ち上げ花火で見送った。
木本の初精霊供養は例年、8月17日の熊野大花火大会と同時に行われている。300余年の伝統ある同大会は木本の初精霊供養で花火を打ち上げたことが起源と伝わる。今年も昨年同様、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、同大会が中止となったが、熊野大花火大会実行委員会(中平孝之実行委員長)では伝統を絶やさまいと、この日に初精霊供養を営んだ。
感染拡大防止の観点から「三密」回避のため、1家庭の参列を10人程度にするよう呼びかけ初精霊供養を実施。七里御浜海岸には23家庭の精霊棚が並び、遺族らが手を合わせた。
日が沈みだした午後6時45分から極楽寺の足立知典住職が導師を務め、町内の極楽寺、大雲寺、祐福寺、瑞雲寺、称名寺、正法寺の僧侶により法要が営まれた。読経が響く中、中平実行委員長はじめ遺族らが続々と焼香。故人の冥福を祈った。
この後、打ち上げ花火が行われ、ケーソンからの花火が夜空を彩った。参列した遺族らは花火を見上げながら、亡くなった人たちを偲んだ。堤防沿いには見物客らの姿も。町民の一人は「花火の音が聞けるだけでもよかった。来年を楽しみにしています」と感激していた。
中平実行委員長は「今年も熊野大花火大会が中止になる中、原点であるこの初精霊供養だけは行いたかった。来年こそは花火大会と供養を一緒に行えるよう願っています」としみじみ。一方、2年連続の中止による課題も深刻化しており、中平実行委員長は「実行委員会の高齢化も進み、大会の準備などを知らない市職員もいる。スポンサーをつなぎとめることも大変。ボランティアを募るなど、大会運営体制の見直しが必要」と話していた。