内閣府は4月29日付で、長年にわたり警察官や自衛官など危険な業務に従事した人を讃える「第44回危険業務従事者叙勲」を発令する。熊野市・南牟婁郡からは熊野市井戸町の元熊野市消防司令、森岡幸伸さん(64)が消防功労で瑞宝単光章に輝いた。森岡さんの経歴や喜びの声を紹介する。
森岡さんは昭和59年4月に熊野市消防本部消防士として奉職。以来、令和2年に退職するまで36年の永きにわたり消防人としての奉仕的精神を貫き活躍した。在職中は消防施設の整備や機械器具の強化、水防施設資材の整理等の実現に尽力し、火災予防思想の高揚にも積極的に尽力。火災現場における適切な活躍や災害時における着実な行動、日常における職員の指導、施設の管理等常に消防本部の先頭に立ち、消防の幹部としてあらゆる面に多大な功績を残した。
印象に残るものとしては、消防に勤務して5年目くらいの頃、七里御浜海岸で女性釣り客が波にさらわれたとの通報を受け、カルバートから海に飛び込んで救助。平成23年4月に飛鳥町小阪で発生した山林火災では、傾斜がきつく水利も乏しい場所ながら現場に急行し、先頭に立って水利からホースを延長するなど、懸命に消火活動を行った。この火災ではその後の調査も担当し、関係機関を何度も巡り約2ヵ月かけて完了させた。
また、平成23年9月の紀伊半島大水害では、相野谷川流域の氾濫を受け、小型船舶免許取得者であったことからボートを操船して救助活動。多くの住宅が2階部分まで浸水する濁流の中、丸2日間不眠不休の救助活動で50人以上を救出し、翌3日目も避難誘導や警戒活動等精力的な活動を続け、地域住民から大いに感謝された。森岡さんは「電線が船の下にあるなど難しい状況で、場所によってはオールで漕ぐこともあったが、あちこちから懐中電灯などで助けを求める合図があり、住宅と集合場所を何往復もしました。3日目の活動を終えて自宅に帰ると、自宅も床下浸水しており驚きました」と振り返る。
親の仕事の関係で中学から大阪へ移り、高校時代は浪速高校ボクシング部に所属。あの赤井英和さんとともに汗を流し、中京大学でもボクシングを続けたスポーツマン。40年来の趣味であるグレ釣りは、釣り具メーカー主催の全国大会で準優勝するほどの名手として知られる。「熊野は五島列島にも見劣りしない名磯。全国から来る釣り人と話をするのも楽しみの一つ。大海原で釣りをするのは良い気分転換になり、幾度となく助けられました」と笑顔を見せた。退職後は畑の手入れや愛犬の散歩などが日課。氏神様である大馬神社の草刈りなど奉仕活動にも汗を流す。
受章の知らせには妻と一緒に喜んだという森岡さん。「色々な事案に対して真摯に取り組んだ結果と思います。受章は素直に嬉しいですし、壁にぶつかっても乗り越えられたのは諸先輩方や良き同僚のおかげです」と感謝。後輩には「身体が資本の仕事。何かあったとしても早期発見で治る病が多いので、健康診断の大切さを伝えていきたい」と語った。