新年度予算などを審議する熊野市の定例市議会が21日に開会した。河上敢二市長は施政方針で「市政において最も危機意識を持たなければならないのは人口減少問題」とし「人手不足や地域社会の維持など人口減少がもたらす現在及び将来への影響を把握、想定し、暮らしや産業などあらゆる分野で必要かつ効果的な対策を進め、成果を上げる必要がある。若者や女性を中心に意見を集め、全ての分野で人口減少対策の視点を持った具体的な施策を実行するため全庁的な検討の場を設ける」と述べた。
河上市長はまず、まちづくりの基本方針として「総合計画の基本理念である『市民が主役、地域が主体のまちづくり』のもと『豊かな自然と歴史の中で人がかがやく、活力と潤いのあるまち・熊野』の実現に引き続き市の総力をあげて取り組みます」と示した。令和7年の市政は人口減少対策としての「地方創生」の取り組みを基本に「働く場の創出」「福祉・健康づくり・子育て支援」「防災対策」を引き続き3つの大きな柱として「DXの推進」「SDGsの推進」を政策横断的目標と位置づけた。
新年度予算は新市誕生後で過去最大の編成。大型建設事業としてはICT教育実施に伴うクラウドシステム整備をはじめ熊野アグリパーク整備事業、電線共同溝整備、山崎運動公園長寿命化対策などを予算化。社会資本整備総合交付金などによる市道をはじめとする生活環境整備にも力を入れる。
農業では熊野アグリパーク整備事業と連携しつつ担い手育成や新品目実証栽培を推進するため大型施設園芸拠点整備に向けた調査検討を進める。林業は市森林・林業ビジョンを基本的な方針に森林経営管理法に基づいた未整備森林の解消に努め、産業的発展を目指した取り組みを進める。
水産業はアコヤ貝母貝の試験的養殖、トラフグ等陸上養殖など「つくり育てる漁業」や藻場再生を引き続き推進。商工業では若者・女性の起業や経営課題へのきめ細かな支援、名物料理の継承を含めた事業継承を促進する。労働力不足や雇用のミスマッチ解消に向けた取り組みも進める。観光は特色を活かした体験型観光コンテンツの開発と情報発信で、滞在時間延長と満足度向上、宿泊促進を図る。
福祉面では「『絆』をもとに支え合い助け合う、健やかに暮らせるまち」実現のため、医療・介護など包括的な支援体制を構築。予防に重点を置き、地域ぐるみの健康づくりを進める。地域社会全体に見守られながら子どもたちが心身ともに健やかに育つことができるよう子育て支援充実を図る。
教育・文化の振興では学校教育の充実、生涯学習活動、文化芸術・スポーツを推進。防災は「全市民が生き抜く」ための防災対策のため、自助・互助を基本に公助が支援。令和6年能登半島地震を踏まえ、あらゆる分野での地震・津波対策の充実強化に向けた取り組みを全庁的に進める。
各種取り組みの方針を説明し、河上市長は「令和7年度はまちづくりの根幹となる第2次市総合計画後期基本計画の3年目。市の将来を見据え、各種施策の深化・発展にこれまで以上に綿密な計画遂行と変化に応じた柔軟な対応が求められます。地方創生においては第2期熊野市まち・ひと・しごと創生総合戦略の最終年度。『地方創生への挑戦』に向けて真正面から立ち向かい、何としても市の活力再生を実現していかなければなりません。11月1日に旧熊野市と旧紀和町が合併して20年の節目を迎えます。これからも市民の皆さんに『熊野で暮らして本当に良かった』と心から実感していただける『活力と潤いのあるまち・熊野』の実現に引き続き全力で取り組みます」と結んだ。
この後、総額184億1792万8千円(前年度比7・8%増)の令和7年度当初予算案(一般会計当初予算案145億3038万8千円、前年度比8・7%増)など計32議案と報告3件が提出された。議員からは市議会の個人情報保護に関する条例の一部改正案が出された。今定例会の会期は3月17日までの25日間。一般質問は3月5~7日を予定している。