秋の叙勲で瑞宝単光章を受章した熊野市木本町の元熊野市消防団木本分団長、瀧本吉也さん(70)に対する伝達式が4日、熊野市役所で行われ、橋本智英熊野市消防団長や北畑亨市消防長も同席する中、河上市長が瀧本さんに勲章と勲記を手渡した。
瀧本さんは昭和57年5月に熊野市消防団木本分団に入団し、その後班長や部長と要職を務めて平成24年には分団長に就任。令和3年3月末に退団するまで38年の長きにわたり、一貫して消防人としての奉仕的精神で積極的に取り組み、団幹部として活躍した。温厚で責任感が強く職務に忠実、消防知識と経験により数々の火災や自然災害などの災害現場で陣頭に立って活動を続けた。分団長就任後は防火思想の啓発に特に力を入れ、消防施設の整備や水利開発、団員の教育訓練等各方面に多大な功績を残している。平成31年に木本町の高台で発生した火災では自ら先頭に立って麓の消火栓から長距離のホース延長で懸命な消火活動を展開。平成23年の紀伊半島大水害時には独居高齢者宅や土砂崩れの恐れのある家を回り、避難誘導に努めた。
38年を振り返って印象に残る出来事としては、入団間もない頃の木本町新田地区で発生した火災を回顧。子どもを当時の木本保育所へ迎えに行った際に園内の放送で火災を知り、そのまま現場へ駆けつけると、火の中へ飛び込んで高齢の女性を救出した。自身も火傷を負ったこともあり「それからは火事の際は落ち着いた行動と、グループでの活動が重要であると痛感しました。その経験もあって、分団長になった際には分団内をグループ分けし、出動もまんべんなく当たることができるようにしました」と話した。
伝達式では、河上市長が「長い間務められたのは、陰で支えた家族の存在も大きかったと思います。瀧本さんの受章は現場の団員にとっても大きな励みになると思いますし、これを機に団活動が活発になることも期待できる。叙勲を得て頂いたことは、市としても大変ありがたく、お祝い申し上げます」とねぎらいと祝福の言葉。瀧本さんは「台風の接近時などは特に緊張感があり、家の安全をしっかり整えてから出動していました。家に帰ってから、じっくりと受章を実感したいと思います」と話し、周囲への感謝も口にした。