どぶろくの器も完成 満足のいく仕上がり 育生の童心窯で窯出し

 熊野市育生町長井の「童心窯」で12日、窯出しが行われた。熱の調整が上手くいき、25回目の歴史の中で過去ベスト3に入る出来栄え。参加者が満足いく仕上がりに喜んだ。

 童心窯は北山村出身の陶芸家・橋詰洋司さんが「焼き物の面白さを伝えたい」と、2010年3月、育生町に住む実母の用地内に自力で窯を建てた。童心窯の名前は、橋詰さんが修行した日本六古窯の一つ、滋賀県信楽の「靖童窯」を主宰する靖童先生から一文字をもらい受け「童心に返り遊び心で楽しむ」という意味が込められている。

 同窯に火を入れるのは毎年4~5月と10~11月にかけ年2回。窯の温度を1250度~1300度ほどまで上げ、1週間ほど昼夜を問わず、交代で温度を保つ。

 今回は10月28~30日に作品を窯に入れ、31日から11月5日に掛けてひと時も絶やさず窯焚き。

 童心窯の特徴は粘土に釉薬(ゆうやく・※注)を使わない「自然釉(しぜんゆ)」の手法。火を絶やさずに関係者らが交代で寝ずの守りをして、1300度近い温度で焼き上げた。

 いよいよ窯出しとなった12日は完成を楽しみに住民ら愛好者のリピーターらが童心窯を訪問。窯の中の温度は冷却されているとはいえ40~50度。住民らが見守る中、橋詰さんらが窯の中に入り、汗だくになりながら作品を一つひとつ丁寧に取り出した。

 完成作品は高火度で燃焼した薪の灰が粘土に付着し、趣きある紋様を生み出した。橋詰さんは「思ったよりも焼き上がりがよく、これまでで三番以内に入る出来」とにっこり。参加者が作品を手に陶芸談義に花を咲かせた。

 また、今月23日の大森神社例大祭で振る舞われる「どぶろく」を入れる器200点も仕上がり、祭典関係者らは「風情ある容器でどぶろくの味を引き立てたい」と話していた。

※釉薬=陶磁器の素地の表面に施すガラス質の溶液。焼成すると薄い層を成し、吸水を防ぎ、光沢を帯びて装飾を兼ねる。主成分は珪酸(けいさん)化合物。金属含有物によって、さまざまな色を呈する。

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