御浜町市木地区に伝わる伝統工芸「市木木綿」を継承しようと活動する「市木木綿を未来へ紡ぐ会」(向井浩高代表)は、1日から織工場移転に伴うクラウドファンディングを開始した。向井代表は「市木木綿は市木に残したい。沢山の人が紡いできた日常や思い出の詰まった市木木綿を次に繋いでくれる人が使いやすいよう準備を進めたい」と話し、協力を呼びかけている。
市木木綿は市木地区に明治時代から伝わる三重県指定の伝統工芸品。植物からとれる綿を使い、1本の単糸を使う。糸が切れやすく織るのが難しい分、使い込むほど柔らかくなり、通気性や吸水性に優れる。
市木地区には明治の最盛期で45軒の織元や工場があったが、現在、継承するのは向井さんただ一人。もともと熊野市木本町で「向井ふとん店」を経営する向井さん。20年前に市木木綿と出会い、後継者のいない状況に「布団も織物も糸を扱うもの。やってできないことはない」と、先代の大畑弘さんから技術を教わった。
現在、向井さんは大畑さん宅の作業場に週1回通い、年間1800㍍、35・5㌢の市木木綿を織り続ける。向井さんは現在53歳。16年間、市木木綿に携わる中で、次世代への継承を強く考えるようになった。現在の作業場は大畑さんから借りているもの。もし、誰か他に継承してくれる人ができた場合、自分の作業場があったほうが良いと工場移転を決心した。
昨年4月から移転先の物件を探す中で、市木木綿を守ろうと同じ志の仲間が集い「市木木綿を未来へ紡ぐ会」(会員16人と1社)が発足。昨年末に移転先が現作業場から徒歩3分ほどの元・中村菓子店に決まった。町の活性化支援を行っている一般社団法人ツーリズムみはま(湊賢一郎代表)も協力し、移転費用捻出のクラウドファンディングを行うことになった。
クラウドファンディングは、インターネットを通じてやりたいことを発表し、賛同してくれた人から広く資金を集める仕組み。「市木木綿を未来へ紡ぐ会」では120万円を目標金額に6月1日から7月20日午後11時まで、支援を呼びかけている。集まった資金は土地と建物購入、古い織り機のモーター取付、移転先の改装に利用する。返礼品には御浜ブルーをイメージした市木木綿を中心に使った品を用意。30万円の出資者(1名)は、オリジナルの縞作りとその命名権を用意した。
向井さんは「熊野市に織工場を移したらという声もありましたが、絶対に発祥の地である市木地区に残したいとこだわりました。市木に残すことに意味がある。会をつくったのは色々な意見を聞きながら、継承してもらえる次の世代に無償で作業場などを引き継いでもらいたいという想い」と、市木木綿継承への強い思いを語る。新たな織工場では2階スペースをつかった展示や体験なども行っていく予定という。
市木木綿のクラウドファンディングは「レディーフォー 市木木綿」で検索できる。または次のURLから。