「こざか俳句会」主宰 家族の協力で完成 久保妙石さんが句集発刊

 熊野市の「こざか俳句会」を主宰する久保妙石(本名・久保妙徳)さんが、このほど俳句集「久保妙石句集」を発行した。孫娘の早絵さんが編集・デザインを担当し、家族みんなで協力するという、もっとも幸福な形態での出版。温厚篤実で、良識豊かな人格を反映し、古里、農事、家族を大切にした良句揃いとなっている。

 久保妙石さんは大正15年、現住地の熊野市飛鳥町小阪に生まれた。元市職員で現在98歳。目も耳も達者で句作に励み、俳句が盛んな当地でも最長老の俳人。主宰をつとめる「こざか俳句会」は、この2月で1132回の句会を重ねている。

 同会事務局の中田重顕さんによると「こざか俳句会」が発足したのは、戦後の混乱がまだ残る昭和24年12月12日のことだった。呼びかけ人は中田八郞、桑原宣夫、鈴木接周各氏。その時の呼びかけ文章の一部が「お互いに如何に忙しくとも心の豫裕、それには色々考え方があると思いますが、手近な唯一の心の糧として俳句を楽しむことを提唱したいと思います。あわただしい日常生活から目を転じ花鳥風物に大自然の荘厳な美、そこには幾多の極楽地帯があり、我欲も邪もなくそれをそのまま生活の慰安に直結していきたいと思います。俳句は決して暇人の遊びではありません」。

  第1回は60人ほど集まったという。妙石さんはその時24歳で参加し、現在も健在なのは妙石さんただ1人という。中田さんは「まさに句会の生き字引と言って差し支えない」と話した。

 こざか句会の同人は現在11人。会員らは尊敬する主宰の句集発刊に喜びの声を上げている。同会では「熊野市立図書館にもあるので、興味ある方は読んでいただきたい」と話している。問合せは長男の久保法司さん(電話090・2613・5277)へ。

 久保さんの句集に掲載されている俳句の一例は次の通り。

新婚の暮らしのぞかれつばくらめ

初鏡妻もひそかに口紅す

ちちろ泣け吾子の病状峠越す

田草取り空の青さに腰のばす

麦笛を吹くや幼き日の音色

子等離郷山ふところの柿を接ぐ

除草機を押す夕焼けの消えるまで

曼珠沙華母逝く遠き遠き道

子の嫁を迎う日数え障子貼る

嫁きし子と落ち合うときめ葡萄狩

もう一度ふんばりなおし大根引く

臥す妻を起こし盆僧迎えけり

期待には添えぬ身となり盆迎う

田を植えて安堵の雨に寝過ごせり

十一人曾孫思いて夕端居

人生の行く道遠し大枯野

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