12日に音楽イベントも 万博でアフリカオペラ披露 天女座藤家さん(現代音楽作曲家)が制作活動

 熊野市波田須町の天女座(矢吹紫帆主宰)に尾高賞を2度受賞した現代音楽作曲家の藤家渓子さん(1963年生まれ)が長期滞在している。藤家さんは現在、西アフリカのブルキナファソに拠点を移し活動。8月4日には大阪万博のブルキナファソの日に披露されるオペラ制作に取り組んでいる。今月12日(日)午後2時からは天女座で開催される音楽イベント「昭和の歌と西アフリカの音」に出演し、電気のない西アフリカの生活とインスピレーションの大地をテーマに話や演奏を行う。

 藤家さんは京都市出身。作曲やオペラ制作で数々の賞に輝き、1995年には管弦楽のための『思い出す ひとびとのしぐさを』で、日本で最も長い歴史を持つ作曲賞「尾高賞」を女性として初めて受賞した。2000年に『ギター協奏曲第2番〝恋すてふ〟』で2度目の尾高賞の栄誉。2020年、子どもたちが独立したことを機に、第二の人生としてブルキナファソで暮らし、現地の音楽家らと活動を続けている。

 藤家さんはアフリカでの生活に「日本では多くの人がアフリカは飢餓や貧困などステレオタイプで支援しなければならないと思い込んでいます。実際に暮らすと全然違う面を見ることが出来ます」と藤家さん。厳しい生活の中でも、食事など物事を人と分け合う喜びなど「私たちが失ったものが残っている。日本とアフリカは遠くて、凝り固まったイメージしか無いのが悔しいですね」と話す。

 ブルキナファソを活動拠点としたきっかけが、大学時代に読んだ本。太古の王朝の歴史を、言葉ではなく太鼓の響きだけで物語り伝える〝太鼓言葉〟への憧れだった。フランスの植民地だったブルキナファソ。先進国の介入により学校や教育などが整えられる一方で、藤家さんは太鼓言葉はじめ伝統文化や発表の場が失われつつあることを危惧する。

 ブルキナファソは小さな国ながら70以上の言語がある。藤家さんは仲間たちと多言語オペラの制作や発表活動を続け、8月4日には大阪万博でも10人のパフォーマーたちとブルキナファソの魅力を伝える。奈良県橿原市金橋小学校の子どもたちがコーラスに協力するという。

 藤家さんは昨年10月、初めて熊野を訪問した。天女座の矢吹さんと共通の友人がいたことなどもあり意気投合。今回は12月28日から天女座に滞在している。「ブルキナファソで生活し、一番日本を懐かしく感じるのは海と霧雨。熊野にはいつか行ってみたいと思っていました。天女座のテラスからの景色が素晴らしい。日本に一時帰国しても、実家より天女座のほうが長くいますね」と笑う。

 天女座で1月12日に開催されるイベント「昭和の歌と西アフリカの音」は入場料2500円(コーヒーと菓子付き)。3部構成で1部は松阪菓子処「老伴」柳屋奉善17代目社長・岡久司さんが懐かしい昭和の話とギター弾き語り。2部に藤家さんが登場。3部は矢吹さんと矢中鷹光さんのステージ。アフリカにちなみ、矢吹さんが『コーヒールンバ』の歌を初披露するという。問い合わせは矢吹さん(090・1471・7241)へ。

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