ツキノワグマが出没した際の関係機関の連携強化と対応能力の向上を目的とする合同訓練が1日、熊野市飛鳥町の小阪集会所で開かれ、主催の三重県と熊野警察署、熊野市、県猟友会紀南支部、地元自治会ら約30人が参加。講義と実地訓練で出没時の対応手順などを学んだ。
開会にあたり三重県農林水産部みどり共生推進課の山田長生課長が挨拶。三重県警察本部生活安全部生活安全刑事課から有害鳥獣駆除や、人の生命や身体に危害を及ぼす恐れがある場合の措置である警察官職務執行法などについて説明。県農林水産部獣害対策課からは、今年度は県内12市町で58件のクマの出没があり、尾鷲市、紀北町、熊野市が飛びぬけて多いことが示され、「紀伊半島のツキノワグマは絶滅の恐れがある個体群として環境省のレッドリストに掲載され、できる限り捕殺は回避するという考え方。条例により三重県指定希少野生動物種に指定されており、保護すべき動物として位置づけられ、捕獲は緊急の場合に限定される」とし、緊急対応が必要となる状況も説明した。
続いて熊野市農林水産課から、市内では本年度、7月29日現在で「らしきもの」も含めて出没件数は27件。5年度は7件だったことから、市民の不安が高まっている状況。特に飛鳥町が多く、目撃情報が6件、養蜂箱の被害は4件発生しており、大半が小阪地区。「対応としては情報が寄せられると防災行政無線や公式ラインでの注意喚起と地元区長への連絡、地元猟友会や福祉事務所、教育委員会、警察署、県へ連絡。状況に応じて現場確認やパトロールを行い、集落への執着が強い個体については県と捕獲の協議を行っている」と示した。
その後、実地訓練に移り「集落にツキノワグマが出没し、人にけがを負わせて逃走した」との想定で自治会からの通報と警察受理、県や市、猟友会紀南支部との情報共有を実施した。続いて現場到着の警察官による規制や熊野市による注意喚起を行い、状況から警察官職務執行法による捕獲が妥当と判断。熊野署生活安全刑事課長の指示で猟友会員が銃を撃ち、ツキノワグマの死亡を確認した。
終了後には振り返りが行われ、猟友会員は「実際には訓練のようにはいかない。迅速にやらないとクマが逃げてしまう。もっとスピードアップを図るべき」などと意見。県や熊野署は「こうした顔の見える関係づくりがスムーズな対応につながる。この機会をスタートとして訓練を重ね、迅速な対応につなげたい」とした。