幻想的な光景広がる 丸山千枚田豊作願い虫おくり

 熊野市紀和町の丸山千枚田で8日、農耕文化の継承と豊作を願う「虫おくり行事」が執り行われた。復田した田の枚数と同じ1340本の灯りが幻想的な景観を演出した。

 虫おくりとは田の害虫を追い払う行事で、農薬のなかった時代に行われていた農耕文化のひとつ。丸山千枚田では、平成16年の熊野古道世界遺産を記念し、紀和ふるさとボランティアらでつくる丸山千枚田の虫おくり実行委員会(新谷進実行委員長)が主催し復活させた。

 例年は観光客も虫おくり行事に参加してもらうが、昨年に続き原点に返り見学型として開催。伝統行事を見て、いにしえからの文化を肌で感じてもらった。

 この日は地元をはじめ県内外から観光客ら約600人(主催者発表)が訪れた。日が暮れ、薄暗くなった頃、棚田には1340個のキャンドルが灯された。夜の帳が降り出す頃にはキャンドルの光が浮かび上がり、訪れた人たちから「きれい」とのため息が漏れた。

 辺りが暗くなり、千枚田がより美しい光景に包まれる中、新谷実行委員長を先頭に入鹿小、中学校の児童生徒や地元住民ら約50人が丸山神社を出発。太鼓や鐘を鳴らし「虫おくり殿のお通りだい」という掛け声を出しながら歩いた。

 午後8時には北山砲が点火され、カウントダウンとともに「ドドーン」と2発の迫力ある轟音が響き渡った。静岡県から訪れた家族連れは「一度見に来たいと思っていました。棚田に揺れる灯りが綺麗で大満足です」と感激していた。

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