熊野市二木島町、荒坂診療所の平谷一人医師が地域医療に尽くす姿に密着したドキュメンタリー番組「せんせい!おかげで生きとられるわ~海辺の診療所いのちの記録~」が6月2日(日)午後9時からNHK総合で放送される。2021年2月と9月に放送され好評を博したシリーズの第3弾で、今回は「NHKスペシャル」として登場する。49分番組。
同シリーズの第1、2弾は2020年11月末から2021年8月末まで10ヵ月110日間をかけて取材が行われ、コロナ禍が続く日本の片隅、小さな診療所の奮闘を記録。「せんせい」とお年寄りのあたたかな交流を通し、医の原点をみつめたドキュメンタリー番組として人気を博した。
番組を制作した東京都の(株)ソリッドジャム、ディレクターの毛利匡さんによると、今回放送される第3弾は去年7月から今年4月まで、60日間にわたって撮影。日々の診察や往診風景をはじめ、病気の妻の介護を抱える先生の暮らしや、町のお年寄りの暮らしぶりもカメラに収めた。
毛利さんは「荒坂診療所の撮影が始まったのは2020年にさかのぼります。診察室での先生とお年寄りの会話がいきいきしていて、まずそれに驚き惹かれました。先生は、患者の人となりや暮らしぶり、家族のことなども良くご存知。『病気を診る』だけでなく、人として向かい合っていることに感じ入り、幾度も撮影に伺うこととなりました。いま、全国で、診療所の休廃業が増えています。背景にあるのは、診療所医師の高齢化と後継者の不在だそうです。先生も75歳。荒坂診療所がこのままで存続できる保証はありません。そんな中で、先生とスタッフは、お年寄りたちのために日々奮闘しています。日本の片隅の、小さな町の小さな診療所の物語を、是非ご覧いただければ幸いです」と話している。番組内容は次の通り。
熊野灘の波静かな入り江にある人口200足らずの町、三重県熊野市二木島町。住民の7割が65歳以上の高齢者というこの町で、お年寄りたちがこぞって頼りにするのが、熊野市立荒坂診療所。医師1人、看護士2人、事務員1人の小さな診療所で、隣接する甫母町、遊木町を含め、地域の多くの高齢者が通ってくる。所長の平谷一人医師(75)は、診療所の2階に妻と暮らしながら、25年にわたって地域医療に力を尽くしている。午前は診察、午後は往診、24時間つながる携帯電話を身につけ夜中でも対応する。元気に100歳を迎えた一人暮らしの女性は、「おかげで生かさせてもらってます」と感謝を口にする。一方で、先生と家族に見送られて静かな最期を迎える方々も。この町では、生と死が、ひと続きの日常の中にある。過疎化、高齢化の中で懸命に、しかし肩肘張らず生きる人々。〝せんせい〟とお年寄りたちの日々は、人がおだやかに生を全うするにはどうしたらいいのか、何があればいいのかを、静かに語りかけてくる。