三重県立紀南高校(孝明校長)の2年生、西萌々子さんと渡部遊馬さんの短歌がそれぞれ第37回(2023年度)東洋大学「現代学生百人一首」で見事、入選した。
現代学生百人一首は「現代学生のものの見方・生活感覚」を詠みこんだ短歌を募集。全国から6万3606首の応募があった中で、西、渡部さんの作品が入選100首の一つに輝いた。
紀南高校では国語科で、学校独自が設定できる科目として「創作」を取り入れている。「読み手が情景をありありと想像できるよう、表現を工夫して書く」ことを目的とし、2、3年生の選択生が俳句や短歌に取り組んできた。同校から東洋大現代学生百人一首の入選は昨年の松田旬さんに続き2年連続。
2日に同校校長室で賞状の伝達が行われ、校長が二人に入選の表彰状と記念品を手渡した。茶道部の西さんの作品は「茶道部の 大事な所作が 出来ぬ今 悔しさの味 抹茶より濃い」。1年生の時、茶道の所作が覚えられず先輩や先生、友達から教えてもらっていたという。上達の早い友達らへの悔しさをかかえながら、友達が点てた抹茶を飲んだときの情景と気持ちを詠んだ。
また、渡部さんの作品「寝たきりの 祖母からもらう 千円は 祖母の鞄に 入れた千円」。誕生日に寝たきりの祖母が「お金をあげるから鞄を取って」と言った。祖母の鞄には薬や書類しか入っていないことを知っていたので、「お金いらないよ」と断った。でも悲しげな祖母の表情に、自分が持っていた千円をこっそり鞄に入れて渡したという。祖母の思いに応えたくてとった行動を短歌にした。渡部さんの作品は秀逸作品15首にも選ばれた。
2人は共に授業で友人らからも意見をもらいながら短歌を制作。「自分の作品がまさか入賞するとは、びっくりしています」と笑顔。西さんは「入賞してちょっと自信がついた」。渡部さんは「短い中で自分の思いを表現しなければならなくて難しかった。短歌作りにあたり、日頃から自分だけの体験を意識するようになった」と話した。
校長は「6万3千を超える作品の中から選ばれた。心がより豊かになり、沢山の人たちが君たちを褒めてくれていることに自信を持ってもらえれば」と2人の入賞を喜んだ。