令和9年度の稼働目指し 温暖化対応の作物も 熊野市金山に大型施設園芸拠点(案)

 熊野市は農業の新たな担い手確保や雇用創出、農業者所得向上などを目的に、令和9年度の稼働を目標に金山町新大谷地区に大型施設園芸拠点を整備する計画を進めている。温暖化に対応するトマトやイチゴを始め、現在試験栽培しているコーヒー、カカオなどを約3㌶の大規模なハウス施設で栽培。農福連携も進める施設を目指す。ハウス整備事業費は8億円を見込んでいる。27日にあった市議会全員協議会で議員に整備方針案が示された。

 市農林業振興課の説明によると、市の農業の現状と課題は柑橘を主に水稲などが営まれているが、中山間地が多く、農地の確保が困難。少子高齢化や獣害、資材高騰など厳しい状況が続いている。広大な面積の農地確保が難しいため、大規模経営が困難で、集約化の経営効率化も図れず他産地に比べ不利な状況。少子高齢化で担い手も不足、負担も大きく、今後ますます難しくなることが予想される。

 市では令和3年度に金山町新大谷地区に先行整備したハウス施設で、安定して栽培できるトマトはじめ、南方系新品種の実証栽培を推進。一定の成果が見え、今後の温暖化を見据え、品質向上や省エネ省力化推進、SDGsに対応する高品質・高付加価値の体制を整える目的で大型施設園芸拠点の整備方針案を立てた。

 同拠点では先端技術を導入し、新規就農希望者の研修施設として活用し、省エネを取り入れた新規就農モデルを取り入れる。バリアフリー化を図り、障害のある人や元気な高齢者に担ってもらうことですべての人材が持てる能力を発揮できる環境づくりを図る。

 6次産業化の推進と販路の確立に関しては、同拠点に近く市が令和11年度の開業を目指し基本計画策定を進めている「熊野アグリパーク(くまのほんわりファーム)」で計画されているファーマーズマーケットや会員向け通信販売に期待。ほんわりファームとの連携でブランド力と市場競争力を高める。

 大型施設園芸拠点は、同ファーム開業時の出荷体制が整えられていることを念頭に、令和9年度の稼働を目指す。6年度にハウス整備計画、8年度に敷地造成とハウス建設。9年度に第一期稼働を予定。造成面積は4㌶で、施設は約3㌶。ハウス施設の事業費は約8億円の見込み。年間売上8千万円を目標に、市が100%出資する株式会社くまの農業振興公社が事業主体となる。施設整備にあたっては農林水産省の支援金を活用したい考え。

 市では大型園芸施設や新規就農者施設等整備に向け、12月市議会定例会に金山パイロットファームから用地約9・6㌶を1億187万4334円で購入する財産の取得に関する議案を提出する。

 全員協議会では議員から農福連携やJA等との協力体制、雇用人数などの質問が出ていた。市の担当者は雇用について「正規とパート合わせて10人以上の雇用が生まれると考えています」と答えていた。

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