日本で唯一、ウミガメと触れ合える道の駅「紀宝町ウミガメ公園」で飼育しているアオウミガメ「三重」(推定25歳)が12日夜に産卵した。同公園内での産卵は19年の歴史で初めて。産んだ卵は30個で、「三重」は初産だという。産まれた卵は公園内の飼育棟で展示している(卵の状態によって中止の場合あり)。
これまでも産卵を願ってきたが成果が得られず、飼育員の伊藤柊也さんが2020年に繁殖プロジェクトを始動。和歌山県串本町の串本海中公園で繁殖方法などを学んできた。その後、2年間産卵は確認できなかったが、エサを野菜に切り替え、温度も変えるなど試行錯誤を繰り返してきた。施設の砂地は縦2・2㍍、幅3・8㍍で産卵スペースが狭いため、地元業者の協力を得て産卵しやすい環境を整備した。
今年4月9日~27日までの19日間、「みえ」と父親の「かめ次郎」(推定33歳)の交尾が確認された。そして今月12日午後6時30分ごろに産卵の兆候が見られ、伊藤飼育員らスタッフが離れた場所からカメラで見守り、午後9時30分ごろに初産卵を確認した。「三重」は飼育棟のプールそばの砂場に68㌢の穴を掘り、そこに卵(縦約5・5㌢、幅約4㌢)を産み付けたという。「三重」は2週間後に再度、産卵にチャレンジする可能性があるとし、期待が寄せられている。
ウミガメは肺呼吸のため水の中で息ができない。卵も同じで、殻を通して呼吸しているので水中だと息ができずに死んでしまう。そのため、ウミガメは海で暮らすようになった今でも陸に卵を産み付けている。
卵は人口孵化機で29度程度の温度を保ちながら育てており、順調であれば60日ほどで孵化する予定。同公園は「これからしっかり、この卵を管理していきます。願わくばウミガメたちが自由に行き来できる昔の海岸を取り戻すこと、そしてウミガメたちが産卵に訪れる未来を作っていきたいです」と話している。