熊野市紀和町の丸山千枚田で10日、農耕文化の継承と豊作を願う「虫おくり行事」が執り行われた。4年ぶりの開催となり、田んぼの枚数と同じ1340本の灯りが幻想的な景観を演出した。
虫おくりとは田の害虫を追い払う行事で、農薬のなかった時代に行われていた農耕文化のひとつ。丸山千枚田では、平成16年の熊野古道世界遺産登録を記念し、紀和ふるさとボランティアらでつくる丸山千枚田の虫おくり実行委員会(新谷進実行委員長)が主催し復活させた。
コロナ禍で令和元年以来中止が続いていたが、今年は4年ぶりに復活した。いつもは観光客も虫おくり行事に参加してもらうが、今年は原点に返って見学型として開催。伝統行事を見て、いにしえからの文化を肌で感じてもらった。
この日は心配された天候も、時々、小雨が降る程度。地元をはじめ県内外から観光客ら約500人が訪れた。
日が暮れ、薄暗くなった頃、棚田には1340個のキャンドルが灯された。夜の帳が下り出す頃にはキャンドルの光が浮かび上がり、訪れた人たちから「きれー」とのため息が漏れた。
辺りが暗くなり、千枚田がより美しい光景に包まれる中、入鹿小、中学校の児童生徒や地元住民ら約50人が丸山神社を出発。太鼓や鐘を鳴らし「虫おくり殿のお通りだい」という掛け声を出しながら歩いた。
午後8時には北山砲が点火され、カウントダウンとともに「ドドーン」と2発の迫力ある轟音が響き渡った。愛知県から訪れた家族連れは「元々はこちら出身なのでぜひ、一度見に来たかった。千枚田のオーナーにもなりたいし、いつかは虫おくりにも参加してみたい」と感激していた。