日本郵便株式会社は熊野市紀和町の入鹿郵便局配達地区で「ドローン(小型無人機)による郵便物などの配送試行」を行っている。20日には、木津呂地区への試行の様子が報道陣に公開された。同地区は2011年の紀伊半島大水害時に孤立しており、ドローンによる救助物資の輸送など、防災面での活用も期待されている。
今月5日に改正航空法が施行され、有人の地域でもドローンを飛ばすことができる最終段階「レベル4」の飛行が解禁された。配送試行は総務省が郵便局や地方公共団体等と連携し、デジタル技術と郵便局ネットワークを活用し地域課題を解決するための実証実験。熊野市での取り組みは東京都奥多摩に続き国内2例目、東海地方で初となる。
入鹿郵便局での実証実験は今月5日から行われており、23日までを予定。使用されているドローンは、東京都のACSL社が開発。住民や歩行者らがいないエリアにおいて目の届かない範囲まで飛行できる飛行レベル3に対応した機体で、幅約1・1㍍、高さ65㌢。バッテリー式で航続可能距離10㌔。最高速度36㌔。1・7㌔までの荷物を運ぶことができる。
20日は入鹿郵便局から木津呂地区の倉屋将昭さん(80)方に1㍍四方の専用箱に詰めた郵便物を届ける想定で試行。入鹿郵便局から飛び立ったドローンは山川を超え、倉屋さん方の庭先に設置された荷物を受け止めるネットの上に荷物を投下した。同局から倉屋さん宅には通常、車で往復約40分ほどだが、ドローンは往復15分ほど。倉屋さんは水害で孤立した時の状況を振り返り「災害に物資を運んでもらえれば有難い」と話した。
この後、ACSL社からは人がいる地域の上空も飛べる「レベル4」に対応した新機体が披露された。最大飛行距離は約35㌔に伸び、5㌔までの荷物が運べるという。
20日の配達試行は熊野市の河上敢二市長、総務省郵政行政部企画課の廣瀬謙課長補佐、ACSL社の鷲谷聡之社長、日本郵政の小池信也常務も見守った。小池常務は「新しい技術を郵便や荷物配達にどう活かしていけるかが重要。これからも将来を見据えたい」。河上市長は「熊野市は広い面積の各地に集落が点在し、過去には災害で孤立した地域にヘリで医薬品を運んだこともあります。日本郵政の実験がうまく成功し、ドローンを活用して、いろいろな形で住民とのつながりができるのはありがたい」と話した。