熊野市育生町長井の「童心窯」で26日から28日にかけて、「窯詰」の作業が行われた。今後、29日から5月5日まで無休で「窯焚き」を行い、同15日(日)の「窯出し」で作品が取り出される。童心窯では2010年3月10日に火が入ってから、焼き物を通じた交流の輪を広げているが、今回も新型コロナウイルスの感染拡大防止から毎回行っている窯出しイベントは中止として、作品の展示と持ち帰りのみの実施になるという。
童心窯は北山村出身の陶芸家・橋詰洋司さんが「焼き物の面白さを伝えたい」と、育生町に住む実母の用地内に自力で窯を建てた。童心窯の名前は、橋詰さんが修行した日本六古窯の一つ、滋賀県信楽の「靖童窯」を主宰する靖童先生から一文字をもらい受け「童心に返り遊び心で楽しむ」という意味が込められている。
同窯に火を入れるのは毎年4~5月と10~11月にかけ年2回。現在行われている窯詰めは、文字通り窯の中に作品を並べていく作業。敷板とくっついてしまわぬよう「道具土」という団子状に丸めた土を作品の底に数個つけ、満遍なく熱がいきわたるよう間隔を取って並べていく。橋爪さんは狭い窯内に身を屈め、今回用意された約400点の作品を一つひとつ丁寧に並べていった。
同29日から約1週間に及ぶ窯焚きでは窯の温度を1250度~1300度ほどまで上げ、24時間を3交代で温度を保持していく。窯焚きでは軽トラ10車分に及ぶ薪を用意し、火の状態や温度を見ながら足すのだが、ただただ足せば良いというものではなく、感覚を研ぎ澄ませて薪の本数を調整するという。その後は1週間ほどかけて徐々に温度を冷まし、窯出しを迎えるが、灼熱によって表現された色合いがそれぞれの器に味わいを加える。
橋詰さんは「コロナの影響でみんなでの窯出しが中止なのは残念。今回も焼きあがったものを各々で持ち帰ってもらいます」と話していた。