令和3年度の紀南地区人権トップセミナーが8日、熊野市井戸町の三重県熊野庁舎などで開かれた。今年度はコロナ対策として各市町をネット回線でつないだWeb配信形式での開催となり、熊野市、御浜、紀宝町の各首長や教育行政関係者ら約30人が人権行政課題について講演を聞き、意識共有を図った。
紀南地区の行政機関における人権に対する意識向上を図り、紀南地区の特性を活かした人権尊重のまちづくりを推進する目的。開会にあたり紀南地域活性化局の辻森芳宜局長が「現代社会では人権問題に加え、性的マイノリティやネット上の差別など課題が多様化し、国では障がい者差別解消法、ヘイトスピーチ解消法、部落差別解消推進法を制定して差別の解消に向けた取り組みを進めているところ。今日はSDGsと人権の関りなどについて講義いただくので、今後の取り組みに生かしていただければ」と挨拶。新型コロナウイルスに関する誹謗中傷や差別・偏見につながる行為などについても注意を促した。
講師は公益財団法人反差別・人権研究所みえの中森洋子研究員が務め「SDGsと人権」をテーマに講演。中森さんはまずSDGsについて「誰一人取り残さない持続可能でより良い社会の実現を目指す世界共通の目標。2030年までに17のゴールと169のターゲット(具体的な達成基準)、232の指標が定められている。未来へ続く世界をどうしていくか考え、行動を起こしていこうというもの。▽普遍性▽包摂性▽参画型▽統合性▽透明性―の理念からなり、限られた国や人々ではなく一人ひとりの行動に委ねられている」などと解説した。
続けて「前文では『人間、地球、繁栄、平和、パートナーシップが掲げられ、誰一人取り残されない一人ひとりを大切にしながら世界を変革するための目標』と記され、この考えと人権とは切っても切り離せないもの。いたるところに人権という言葉が出てきており、内容はすべて人が生きることと関係していて人権がベースになると考えられる」と説明。17のゴールについて説明したうえで「特に人権に関わるもので日本の取り組みが遅れているのは▽相対的な貧困▽女性国会議員の人数▽男女の賃金差など―。『困っている』と言えない社会が問題で、相談機関がありながらも活用されてない状況。これが自殺者の増加にもつながっていると思われる。『誰一人取り残さない』を自分の問題とし、『誰』が取り残されているのか、『誰』を取り残さないのか。この『誰』を認識した取り組みが必要。『誰』はマイノリティの人が当たることが多く、見ようとしないと見えない、気づこうとしないと気づけないことがあるはずです」と力を込めた。